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「建設業許可事務ガイドライン」の改正(建設業法に基づく経営業務管理責任者及び営業所専任技術者等が行うテレワークを恒久的に常勤として認めた)について

1.制度の概要

従来、建設業法第7条に基づいて、建設業者に設置が義務付けられていた経営業務の管理責任者及び営業所専任技術者等については、本社・本店や営業所において職務に従事することや常勤することが求められていました。

しかし、新型コロナウイルスの影響により、建設業法に基づく経営業務管理責任者、営業所専任技術者及び建設業法施行令第3条に規定する使用人については、新型コロナウイルス感染拡大防止の一環として、一定条件下においてテレワークを行った場合においても、常勤又は専任の要件を欠くことにはならないものとする運用が行われてきました(「テレワークの取扱いについて」令和2年4月3日付事務連絡)。

そのような中、建設業界内において、上記の特例措置の恒久化を求める声が拡大し、内閣府が令和3年11月5日に開催した、規制改革推進会議の部会においても、日本商工会議所が、建設業界から出されている要望を紹介するする形で、経営業務管理責任者と営業所専任技術者の常勤義務の緩和を要望しました。

部会に出席した国交省の担当者も、「働き方改革の観点からテレワークの導入は有意義であり、一定の条件下でテレワークを認める方向で検討する」との見解を出しました(「日経XTEC」、「建通新聞」参照)。

そして今回、意見公募を経て、テレワークによる経営業務管理責任者、営業所専任技術者等の常勤義務の緩和を目的とする、「建設業許可事務ガイドライン」の改正が行われました(令和3年12月9日国不建第361号、以下「ガイドライン」という)。

2.ガイドラインにおけるテレワークとは

ガイドラインによれば、建設業法第7条で求められる、経営業務管理責任者、営業所専任技術者及び建設業法施行令第3条に規定する使用人に認められるテレワークによる働き方とは以下のようなものです。

「営業所等勤務を要する場所以外の場所で、ICTの活用により、営業所等で職務に従事している場合と同等の職務を遂行でき、かつ、当該所定の時間内において常時連絡を取ることが可能な環境下においてその職務に従事すること」(「ガイドライン」20頁)。

具体的には、「メールを送受信・確認ができることや、契約書、設計図書等の書面が確認できること、電話が常時つながること」(「営業所専任技術者等のテレワークに関するQ&A」、以下「Q&A」という)が必要であり、ICT機器の使用状況等を含め総合的に判断するといわれています。

営業所専任技術者を含む全従業員がテレワークをした場合問題があるかについては、「テレワーク中連絡先等を発注者が把握できるようにしておく必要があり、また、発注者から対面での打ち合わせを求められることを想定して、対面での打ち合わせ環境を整えておくことが必要」(「Q&A」)とされています。

沖縄在住者が北海道の営業所専任技術者になるケースなど、著しく距離が離れた場所でテレワークを行うことができるかについては、「営業所専任技術者は、緊急時等には対面での説明や現場確認が求められることが考えられるため、従来、営業所に常識上通勤不可能な遠距離に居住する者については「専任」要件を満たさないと考えてきたことを踏まえ、営業所から常識上通勤不可能な遠距離に居住する場合には」たとえテレワークといえども、「専任」要件を満たさないものとしています(「ガイドライン」27ページ【第7条関係】2.(1)以下)。

3.専任要件

前記からもわかる通り、一定条件下においてテレワークが認められても、営業所専任技術者の「専任」要件が変わるわけではないので注意が必要です。例示すれば、①営業所の所在地から著しく遠距離に居住する者、②他の営業所において専任を要する者、③建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引士等他の法令で専任が要求されているもの(許可建設業者と営業体及び場所が同一である場合を除く)、④他に個人営業を行っているものや、他の法人の常勤役員である者はいずれも「専任」要件を満たしません(「ガイドライン」27ページ【第7条関係】2.(1)以下)。

4.テレワークを行う経営業務の管理責任者、専任技術者、令3条使用人が、専任性を要する工事の配置技術者を兼任できるか

「現場への専任を要する主任技術者又は監理技術者は、技術研鑽のための研修、講習、試験等への参加、休暇の取得、その他合理的な理由で短期間現場を離れる以外は、常時継続的に当該現場において建設工事を適正に実施するための業務を行」(「意見募集の結果について」令和3年12月9日)う必要があるため、今回の改訂後においても兼任は認められません。しかし、意見公募された声を元に今後検討が行われる予定です。

5.「ガイドライン」改訂の適用範囲

本「ガイドライン」は、地方整備局建政部長等あてであるため、大臣許可に関する許可事務を拘束しますが、知事許可に関する許可事務を拘束しません。そのため、今回の「ガイドライン」の改訂は、建設業の知事許可の要件として直接影響を与えるものではありませんが、国土交通省では、都道府県の建設業許可部局に対しても、今回の改正内容を参考送付する予定ですので、今後知事許可も大臣許可の運用に倣う可能性がありますので注意をしておきたいところです。

6.本改正がもたらす許認可への影響

今回の改正によって、建設業許可業者においては、従前に比べ、より柔軟な働き方が可能となることから、建設業許認可において最も高いハードルであった、人に関する要件(経営業務管理責任者や営業所専任技術者の「専任」性・常勤性)が緩和されることになります。これにより、資格は満たしているものの、就業条件の観点から、建設業許可業者の営業所専任技術者等の職に就くことができなかった人々にも、こうした職に就くチャンスが生まれ、建設業界における人材のマッチングがしやすくなります。

また、今回の事例は小さな改正ではありますが、デジタル技術の発展が確実に許認可への影響を強く発揮するものであることを示していると思われます。今後予想される展開としては、行政手続のデジタル化における3原則である、デジタルファースト、ワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップが推進されることにより、役員や経営業務の管理責任者、営業所専任技術者等に関する変更情報の更新等、多くの許認可事務が、リアルタイムかつ継続的な作業に変質してゆくことが考えられます。

また、新規で許認可を得る際の事実確認も、デジタル化技術の恩恵により、その作業が大幅に簡素化されてゆくのと同時に、事業者の申請意思の確認やその代理の真正性の問題を技術的にどのように解決してゆくかが問われることになると思われます。

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